物質中のミュオンの存在状態①~ミュオンは高感度の水素シミュレーター~
◉物質中のミュオンは不純物であり、不純物としての役割に注目が集まっている水素の状態を調べるのに効果的であります。
金属中の水素の研究をはじめ、物質科学においては欠陥中心、不純物としての「水素」が重要な役割を果たすと考えられるような事例がたくさんあります。
だから「水素」をもっと調べたい。
しかし、
この世の元素において「水素」ほどとらえにくい元素はありません。
いわんや少量の場合はですね。
ここで、ミュオンの登場であります。
物質中に注入されたミュオンはその物質にとっては異物(格子欠陥、不純物)であります。
すなわち、注目されている不純物としての「水素」と物質中のミュオンは同じ境遇にあるわけであります。
ですから、物質中でのミュオンの存在状態を知ることで、水素の状態を調べることができるわけであります。
科学者たちにとってはミュオンの存在状態そのものが興味ある研究対象なわけですね。
放射線(量子ビーム)としてのミュオン
◉放射線ビームとしてのミュオンの物質との関係は、X線や中性子のそれとは大きく異なります。
ミュオンは物質を調べるのに用いられることがあります。
その方法の概要は、
①ミュオンをスピン偏極したビームとして取り出す
②それを物質中に注入する
③物質中で崩壊したミュオンから放出される高エネルギーのβ線を観測する
という流れ。
これはさながら放射線を利用した解析に似ている。
が、
非なるものであります。
物質科学で用いられる量子ビームの代表例は
⑴X線
⑵中性子線
であります。
これらは回折現象を利用しており、ビーム照射後に再び物質から出てくる自身を観測することでその役割を果たせます。
しかし前途したように、ミュオンの場合は物質中で崩壊させなければならないため、ミュオン自身が観測されることはありません。
ミュオンの崩壊によって発生するベータ線が観測対象となります。
角運動量④~角運動量保存則~
◉力のモーメントが0のとき、角運動量保存則が成り立つ。
【復習】
角運動量とは
→『どんくらいの勢いで回ってるか』『ビュンビュン具合』を表す量。
で、
大きさは
→『運動量×支点からの距離』⇔『支点からの糸が長いほど大きくなる』
↑感覚的にわかる?
で、
向きは
→『支点から作用点までの向きから運動量の向きに右ねじを回したときに進む方向』
力のモーメントとは
→『物体を回転させようとする能力』
でした。
で、
今日のお話は、この力のモーメントが0である場合は、角運動量は常に一定となるというお話です。
では、力のモーメントが0になるときとはどのようなときでしょうか?
ときに、力のモーメント(N)は
N=r×F
で表されました。
すなわち、rとFが平行であればNは0となります。
したがって、Fが中心力となって支点方向に向く場合に力のモーメントは0となり、角運動量保存則が成り立ちます。